台風19号が日本を縦断した体育の日に都内で開催された「動物リハビリテーション実践セミナー」に参加してきました。
講師は、米国「Canine Rehab – Canine Fitness Unleashed」のオーナーで獣医師であるケリー・フィッシャー先生(Kerry Fisher (DVM, CCRP))です。ケリー先生は20年以上にわたって獣医師として動物リハビリテーションの医療活動に従事されています。
このセミナーは、日本動物リハビリテーション学会主催のセミナーで参加者の多くは、動物病院に勤務される獣医師の先生方や看護士の方です。
午前中は座学形式で整形疾患や神経疾患に対する治療症例が紹介されました。問題(疾患)をチェックする際の注意点や対処(治療)方法の選定プロセスなどをケリー先生ご自身の経験をもとに詳しく説明していただきました。
犬の状態を観察する上では、以下のポイントを注意深く観察するそうです。
◆ 姿勢
頭、尾、肩甲骨、トップラインの位置やバランスを確認する
◆ 歩様
常歩や速歩などの歩様を確認する
◆ 運動機能
日常における健康度、虚弱度、筋力、バランス、柔軟性などを確認する
◆ 行動
問題行動がないか確認する
◆ 痛み
痛みを感じているかどうか確認する
◆ 力(筋力)
筋肉が委縮していないかどうか確認する
整形疾患、神経疾患を持った犬の場合には、特に歩様を細かくチェックするそうで、歩行やトロットでの頭部の位置、脚の運び、体重移動を観察する必要があるそうです。
※歩様については、ミネソタ大学のサイトでアニメーションで詳しく紹介されていますのでご覧ください。
歩様の中でも側対歩(同じ側の2本脚で交代に体重を支える:左側の二本に続いて右側の二本)については、側対歩が正常とされる犬種を除いては、犬が疲れている場合や肩や関節、腰、股関節などに痛みを持っている場合があるので注意して欲しいと云う事でした。
特にドッグアジリティなどのドッグスポーツを楽しんでいる犬は時に側対歩の歩様が見られる場合が多く、疲れによるものなのか、肩や腰の痛みによるものなのかをチェックする必要があるそうです。
お昼休憩を挟んで午後からはバランスボールを使ったリハビリテーションの実践セミナーが行われました。
ケリー先生は、FitPAWSバランスボールの製造メーカーの顧問もされており、バランスボールを使ったリハビリテーションを数多く実践されています。最近は、整形疾患や神経疾患を持つ犬達のリハビリだけでなく、ドッグアジリティなどのスポーツドッグ(アクティブドッグ)のパフォーマンス向上のためのフィットネストレーニングも実践されているそうです。
当日は、セミナー会場となった動物専門学校のモデル犬を使って様々なバランスボールを使ったトレーニング方法を教えて頂きました。
最初は簡単なドーナッツ型のバランスボールを使ったトレーニング
ピーナッツ型のバランスボールを使った様々なトレーニング
並べたバランスボールの上を上手に渡る黒ラブちゃん
バランスボールを使ったトレーニングは、病院や専門施設だけでなく、自宅で飼い主と一緒にトレーニングすることが出来ます。
1日5分~10分程度、バランスボールの上で座ったり、立ったり、廻ったりするだけのバランス運動で体幹や筋力を強化することができるそうです。
セミナー当日もモデル犬を使って色んなバランスボールで様々な動きを実践しましたが、どの犬も特にバランスボールを怖がることなくトレーニングすることができました。
【トレーニングポイント】
◇ 疾患のリハビリの場合には、掛り付けの獣医師と相談の上で行う
◇ 座ったり、立ったり、廻ったりする動きは最初に平らな所(床の上等)で教えておく
◇ 出来ればクリッカートレーニングで犬が積極的にトレーニングに取り組むように導く
◇ 1回のトレーニングは5分~10分程度 15分以上はやらない
朝10時から夕方5時までのセミナーでしたが、犬の健康状態をチェックする上での観察ポイントやバランスボールを使った様々なトレーニング方法を教えて頂き、とても有意義なセミナーでした。
Kerry先生はじめ本セミナーを主催いただいた関係者の皆様に感謝いたします。この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。
バランスボールを使ったトレーニング方法については、当サイトにて後日詳しくご紹介していきたいと思っております。